
国が事故直後に十分な実態調査を行わず不明だった「ヨウ素131による初期の甲状腺被ばく」を、甲状腺がんへの住民の不安を拭うために、一部の学者たちがボランティアで解明。

弘前大学・床次眞司氏
1月12日の朝日新聞が『甲状腺被ばく、体内セシウムから推計 弘前大が考案』という見出しで記事を載せ、夜のNHKスペシャルでは関連するドキュメンタリーが組まれた。(一部、昨年3月にETVで放送した「放射能汚染地図5 埋もれた初期被ばくを追え」と重複)
依然として一部の学者たちがボランティアで地道な研究を続けることで国の尻拭いをせざるを得ないことに、あらためて驚きと怒りを覚える。国は真相を究明されることを怖れているのか。
彼らによって推測された「ヨウ素131のプルーム(放射能雲)」に晒された福島の子供達は50ミリシーベルト以上被ばくした可能性が高い。昨年夏迄に、既に半数近くに甲状腺の異常も見つかっているのだ。
チェルノブイリでは甲状腺がんの発症は原発事故後数年経ってからだった。早期発見のための健康管理のみならず将来の補償に備えるためにも事故当時の行動記録をできるだけ詳しく残しておくことが必要だ。
【内容要旨】
(映像前半)
「どれだけ被ばくしたのか知りたい」それが住民の切実な希望だ。だが、国による正確な測定が行われないまま消えてしまったヨウ素131。
弘前大学被ばく医療総合研究所の床次眞司氏らが、福島県浪江町の住民に甲状腺被ばく検査を実施したところ、62名中46名(約7割)の甲状腺からヨウ素131を検出した。(中央値:3.5mSv)
「あくまで過大に推測しているが多くの子供たちに影響があるだろう」との床次氏の説明に頭を抱える浪江町役場の担当者たち。
多くの避難者を受け入れていた(原発から南に離れた)いわき市も例外ではない。国からの指示がないため安定ヨウ素剤は配布しただけだった。さらに南の茨城県でもヨウ素被ばくへの関心は高い。 (映像33分頃~)
●ヨウ素131はどのように大気中で拡散されたか
濃度が高かったヨウ素131。原因は南下した放射能プルームだった!
津波でダメージを受けたモニタリングポストに代わり、福島県原子力センターによる測定(ダストサンプリング)が3月12日から13日に実施されたが、原発の水素爆発により国(文部科学省)の指示で中止された。18日に再開されたが原発で異変があった14日から17日のデータが抜け落ちていたところ、半年後、原発周辺5ヶ所のモニタリングポストなどのデータが残っていることがわかった。
これらのデータにより拡散されたヨウ素131の総量は20.6京ベクレルと推定された。(チェルノブイリの約10分の1)
●放射能プルーム(ヨウ素131)の拡散シミュレーション映像
3/15 04:00(クリックで画像表示):いわき市に2,000ベクレル/m3以上のヨウ素131が到達(市内最大空間線量の観測時と一致)
3/15 11:00(クリックで画像表示):関東一円に到達(世田谷で241ベクレル/m3のヨウ素131を測定。京大の小出裕章氏も参議院の行政監視委員会で別の観測データを証言している⇒YouTube動画)
3/15 18:30(クリックで画像表示):北西方向の風で飯館村や浪江町に1万ベクレル/m3以上のヨウ素131が到達
これらをもとに、3月12日から31日までに地表付近で拡散されたヨウ素131の合計値から作成された濃度分布図が右図である。
左図は、茨城県立医療大学・佐藤教授が、「5歳児が3月12日から31日の間、24時間外気を吸入した」と仮定して作成した「甲状腺等価線量」の推定分布である。内陸部は20mSv台、沿岸部の一部では50mSv超のヨウ素被ばくを示す甲状腺等価線量が推計されている。チェルノブイリでは平均50mSvで有意に甲状腺がんが増加した。
これらのデータを当時の住民の行動調査(どこにどの時間いたか)と合わせてより精密な分析が必要とされる。
【内容要旨】
事故直後の実測値からヨウ素とセシウムの比率を平均で「0.23:1」と試算して、事故当時の「甲状腺等価線量」を推計するのだ。
セシウムを検出できた125人についての推計結果:
推定範囲:1~33mSv
中央値:2msV
最大値も33mSvであり事故直後の甲状腺等価線量とほぼ同じとなったので乳幼児の等価線量が大いに心配される。
くどいようだが、この最大値は成人より影響を受けやすい乳幼児の場合は63mSvと推計される。チェルノブイリでは平均50mSvで有意に甲状腺がんが増加した。
福島第一原発事故の後、政府や東京電力は各種調査に基づき、一般住民に対する放射能の健康影響はほとんど無いと説明してきた。
しかし見過ごされている被ばくがある。事故直後に大量放出された放射性物質・ヨウ素131の影響だ。この放射性物質はチェルノブイリ事故後に急増した子どもの甲状腺ガンとの因果関係が科学的に立証されている。ただし半減期8日と短時間で消滅するため、放出直後の被ばく回避措置、そしてヨウ素が消える前の正確な被ばく調査が重要となる。ところが今回はいずれも行われなかった。
その結果として、被災地では事故から1年半を過ぎて乳幼児を抱えた親たちの間で不安が膨らみ続けている。
被災者にとってヨウ素被ばくの目安を知っておくことは、今後のガン検診や予防対策に決定的な意味を持つ。住民の切実な要望にこたえようと、研究者がヨウ素被ばく量の実態に迫ろうとしている。また一方では、放射能測定や気象の専門家チームがセシウムではなくヨウ素の放射能汚染地図を作成に挑んでいる。様々なアプローチによってヨウ素被ばくの空白が明らかになる中、汚染にさらされた福島県の自治体は独自の健康対策に乗り出し始めた。番組では最新の科学技術によって失われた時をさかのぼる研究者たちの実証的な知見を総合し、初期被ばくの実態を解き明かす。
【関連動画】

【前半】
【後半】
(↑それぞれ動画がポップアップします)
原発事故初期に放出されたヨウ素131は、甲状腺がんの原因になる危険性があるが、半減期8日と短い間に消失してしまうため、今回の事故で国は、事故初期の現場の混乱などによってヨウ素131の動きを十分に把握できず、住民の内部被ばく調査も行わなかった。無防備なままヨウ素131にさらされた可能性がある子どもたち。しかし、事故初期に独自の甲状腺調査が行われていたことや、未公開の原発周辺のデータがあることが判明。NHK番組解説ページ
・『福島の子どもの甲状腺がん-発症率100倍以上に!』 09/13/2012
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